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作:トモ月蔵さん 2006年2月14日投稿分

バレンタイン企画に投稿して頂いたSSです。
里香と僕は一緒に退院した。

それはついこの間の話しだ。
だから、今は色々なところに行ける。
もちろん、里香と一緒に。そして、どこまでも行ける。

これは、退院してやっと自由になった僕と、退院して初めて自由になった里香の特別な日の物語。
そう、里香にとって特別な日の物語。そして、僕にとっても特別な日となった物語。

ここは里香と始めて一緒に来たところ。何度も来たところ。
里香が泣き、決意したところ。
僕が里香の望みを叶えようとしたところ。そして里香に初めて・・・・・・
ここは砲台山。その山頂にある台座に、僕たちは来ていた。
夜の空は、きれいに晴れて月が出ている。

「ねえ、裕一」
「ん、なんだ里香?」
砲台山の台座に座っている。もちろん、僕の横には里香がいる。
「月がきれいだね」
「うん、きれいだな」
「でも、半分だね」
「そうだな」
「半分でもきれいだね」
「そうだな」
二人で夜空に浮かぶ月を眺めている。
するといきなり里香が、
「あ、あのね裕一!」
っと、緊張したような声を出した。
「どうしたんだよ、里香?」
「今日って何の日か知ってる?」
「今日が何の日か?えっと、何が・・・・・」
うわ、何か忘れてたかな?やばい、分からなぞ!
「もう!裕一ってば、そういうところ鈍いんだからっ」
バシッといきなり頭を叩かれた。
「ご、ごめん里香」
どうして、俺ってこんなに忘れっぽいのだろう?なんか里香すごく怒ってるし。
というか、いきなり殴るのはどうかと思うが。
「だから、今日は!!」
「う、うん」
「2月14日でしょ」
あ、確かに言われてみればそうだった。でもなんで?
「そういえばそうだったね」
ダメだ。一体、何で里香が怒っているのかさっぱりだ。
「ふん。もう裕一なんて知らないもん」
そっぽを向いてしまう里香。やばい、このままだとやばい。
「ちょっと、ごめんって里香!頼むから俺が何を忘れているのか教えてくれよ!」
「いい裕一?教えてあげるから、よぉく聞くのよ!」
「う、うん。心して聞くよ」
なんだろう?何かドキドキしてきた。何の予感だろうか?
「今日は2月14日、女の子にとっては大切な日なの」
「うん・・・・・」
「だ、だから今日は・・・・・バ、バレ、バレン」
「ばれん?」
「だから!今日はバレンタインだってば!!」
あ、そうか。そうだった。すっかり忘れていた。確かに女の子にとって特別な日だ。まあ、男にとっても特別な日になるけど。
「そ、そういえば、今日はバレンタインだったね」
「そうよ!やっとわかったの?裕一って本当に鈍いんだからさ」
「ごめんな、里香」
「まあ、いいわ。それでね、裕一。あの、ね?そ、その・・・・・」
「なんだよ、里香?どうしたんだ?」
こんな里香もいいかも知れない。めったに見れない里香の姿だから、よく見ておこう。
「だから、これ」
そういって、何かを差し出す里香。それを受け取る僕。
それは小さな里香の手にすっぽりと入る、小さな箱だった。きれいな箱だった。リボンで装飾されている。それと、手紙?
里香は顔が赤くなっているのが――夜なのに――見えた。
「あのね、この手紙は家に帰ってから読んで」
「あ、ありがとうな!里香!マジでうれしいよ」
僕の顔も里香に負けず赤くなっている自信がある。
「わかった?家に帰ってから手紙読むのよ」
「ああ、わかったよ」
この手紙、何が書いてあるんだろう?
「うん、でもよかった。裕一によろこんでもらえて」
「当たり前だろ。だって、里香からの贈り物なんだから」
「そっか。よしよし、裕一は素直だね」
そう言いながら、僕の頭を撫で始める里香。
「や、やめろよ里香。はずかしいだろ」
でも、全然嫌なわけはなく。身体と心は、自然と従ってしまっている。
「かわいいね裕一。顔真っ赤だよ」
くすくす笑う里香。その仕草に思わず、ドキッとしてしまう。
最近、こういうことがよくあるのだ。まあ、仕方が無いとは思う。
僕は里香に惹かれているのだ。これは、間違いようの無い真実だ。
だから、僕は里香の方を向いて、今日のお礼をすることにした。
それは、言葉なんかじゃなく行動で示してこそ男というものだ!
しかし、
「じゃあ、そろそろ帰ろうか裕一」
そういって立ち上がる里香。
せっかくの僕の決意は消し去られてしまった。
まあ、仕方が無いので、先に立ち上がった里香に合わせるように立ち上がる僕。
すると―――――


「じゃあね、裕一。今日は楽しかった」
微笑む里香。それにつられ自然と笑みの形になる僕の顔。
「俺もだよ。また行こうな」
そういって、里香は家に入っていった。
さあ、僕も早く家に帰ろう。そして、早く里香からの手紙を読もう。

里香からもらった小さな箱の中には、かわいいチョコが入っていた。
「これは・・・・・市販品じゃないよ、な?」
きっと、これは里香の手作りなのだ。そう思うと感動がこみ上げてくる。
「うん、うまいなこれ」
美味しかった。何か別の要素も入っているように思うが、確かに美味しかった。
「それじゃあ、次は手紙か」

裕一へ
今日は楽しかった?
きっと私は楽しかったと思う。
チョコどうかな?初めて作ったんだけど。
それから、最後にちゃんとできたかな?
これからもずっといっしょに。
              R

里香らしい、簡潔な手紙だった。でも、僕には里香の気持ちがすごく伝わってきた。
「それにしても里香のやつ。はじめから・・・・するつもりだったんだ」
思い返して、顔が赤くなったのが分かった。
次、里香に会った時いきなり抱きしめてやろう。今日のお返しだ。
そして、耳元で今日のお礼を言ってやろう。


あの後、どうなったのかと言うと。
立ち上がった僕の顔を里香が摑まえたのだ。
そして、里香が顔を近づけてきて・・・・・・

また里香からキスをしてきたのだ。

僕はまたしても先を越されてしまったのだ。
だから僕はいつまでたってもヘタレなのだろうか?と真剣に悩む。
しかし、その思考はすぐさま中断されてしまった。
さっきの光景が頭に蘇ってきてしまうからだ。
どうやら、僕は奇襲に弱い性質らしい。そして、里香には一生、勝てそうにもないようだ。
「まあ、いいか」
そうさ。今日は今までで一番特別な日になったんだ。だから、僕はこれでいいのだ。

僕は里香と一緒にいる間は、ずっとこの幸福感に満たされていく。
そして、この感覚を里香に分けていくのが、僕の役目なのだろう。

里香と一緒にいられるのは、いつまでかわからない。
でも、僕はずっとこのかけがえの無い日々の一ページとして、今日の思い出を心に残していこう。

そう。ずっとずっと心に残していこう。里香との思い出を。

COMMENTS

里香がよくかけていました。あと少しぬけてる文字がありましたよ。

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